「あっ、ユリアン。無事に戻って来られたわね」
ユリアンとシオリ達が別れ、1時間が経過した。聖王廟の入り口でユリアンを待つシオリ達の前に、ようやくユリアンが姿を現わした。
「お疲れ様、ユリアン。聖王ブーツはちゃんと手に入れられた?」
「ええ。何とか」
そう言うユリアンの左脇には、しっかりと聖王ブーツが掲げられていた。
「さてと、ユリアンも無事戻ったことだし、俺はそろそろ目的地へと向かう」
「何処に向かうんです、ユキトさん?」
「イゼルローンを経由してモウゼスに向かう。そこにミスズの何かしらの手掛かりがありそうだしな」
「イゼルローンですか。確かあそこは聖王ゆかりの地の一つでしたね。僕もイゼルローンまでお供しますよ」
「別に俺は構わんよ」
ユキトが二つ返事したことにより、ユリアンはユキトと共にイゼルローンへ赴くこととなった。
「そうか、二人はイゼルローンへ向かうのか。では私はハイネセンへ行き魔貴族の一人、アラケスを倒すとしよう」
「柳也さん!」
魔貴族を倒すという大それた行為をさらっと行ったことに、ユリアンは驚きの声をあげた。聖王遺物をいくつか揃えたユリアンではあったが、まだ魔貴族と渡り合える自信はなかった。
「魔王殿の奥へ進むのに必要な聖王遺物、”王家の指輪”は、ミシオ当主から既に借り受けた。ユリアン、少しでも君の負担を減らさなければならないからな」
「魔貴族を一人で倒すってか、流石は俺の師匠だな……」
「そういう訳だ、二人共、縁があればまた何れ!」
ユキトとユリアンに別れの挨拶をし、柳也は四魔貴族アラケスを倒す為魔王殿のあるハイネセンへと向かって行った。
「ところでシオリ、君はどうするの? 僕達と一緒にイゼルローンへ行く?」
「ううん、ユリアンと一緒に旅をしたい所だけど、ユウイチさんに心配かけたままだし、お姉ちゃん達と一緒にハイネセンに戻ろうと思うの」
「そう。じゃあね、シオリまた今度」
「ええ。ユリアン」
聖王生誕の地にて運命とも呼べる邂逅を果たした運命の子達。二人は共に聖王が遺し試練を乗り越え、今再びそれぞれの道を歩み始めたのだった。
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SaGa−24「アユの夢」
「ふう、ようやく着いたな。アユは元気にしているかな?」
長い船旅を終え、ユウイチはアユのいるハイネセンへと戻って来た。久々にハイネセンの土を踏んだユウイチの脳裏にまず浮かんだのは、アユの安否だった。
あれからアユは元気にやっているだろうか? 病状は悪化してないだろうか? ユウイチの脳裏には屈託のないアユの笑顔と、咳き込む悲痛なアユの顔が交差していた。
今すぐアユに逢いたい――! そう思うユウイチだったが、まずはコーネフ会長に任された仕事を終えねばならないと、アユに逢いたい気持ちを必死に抑えて一路ヒジリの工房を目指した。
「ええっと、コーネフ会長に渡された地図に寄ると……、ああここだ」
ユウイチはコーネフに渡された地図を頼りにヒジリの工房を探し、苦労の末辿り着いた。
「! 貴方は!?」
工房の中へ入ると、二人の女性に目が付いた。その内の一人を見た時、ユウイチは驚いた。何故ならばその女性は、ジュンから行方知れずになったと聞かされていたサユリだったからだ。
「はぇ? 貴方は確かユウイチさんでしたよね?」
「ええ、お久し振りですサユリさん。ジュンから行方不明になっていたと聞いていたので、ご無事で何よりでした」
「! ユウイチさん、ジュンさんにお会いしたのですか!?」
「ええ、ランスで……」
その後サユリがジュンの安否について訊ねて来たので、ユウイチはジュンから聞いた一部始終を話した。
「そうでしたか、リヒテンラーデに流れ着いて、その後ユキトさんと共に……」
「ええ。ジュンにサユリ様がご無事なことを伝えればきっと喜びますよ。ところでサユリ様はどうしてここに?」
「はい、連れのマイがこの工房に用があると」
「……」
サユリはマイに話題を振ったが、マイはただ沈黙しているだけだった。
「マイ君、待たせたな。剣の方は磨ぎ終わったぞ」
そんな時、ヒジリがマイの剣を掲げて工房の奥から姿を現した。
「ありがとう……」
ヒジリに対して、マイは軽い感謝の言葉を述べた。
「ところで君は? 見掛けない顔だが」
「どうも初めまして。ネオ・マリーンドルフ商会会長補佐のユウイチ=ウィロックという者です」
そう言い、ユウイチはヒジリに名刺を渡した。
「マリーンドルフ……最近活動を再開したと聞いてはいたが。それでその会長補佐が私に何の用だね?」
「ええ、実は……」
ユウイチは、コーネフに任された仕事の詳細をヒジリに語った。
「ふむ、かの薔薇の騎士の武具を任されるのは光栄の極みだが、今この工房は人手不足でな。とてもではないが満足の行く武具の供給は出来ない」
「ここに来るまで色々探して見たけど、2、3人しか見付からなかった……」
マイは再びハイネセンへ戻って来るまで、嘗てヒジリの工房で働いていた職人を何人か見付けた。しかしそれでも薔薇の騎士規模の旅団に武具を供給する程の人員は満たしていなかった。
「人員、資材等に関してはコーネフ商会を通じて何とかしますので。今はとにかく我が商会へのご協力をお願いしたい次第です」
「無論、協力はする。こちらとしても仕事は欲しい所だし、何よりマリーンドルフ商会の復興に協力したい」
「ありがとうございます」
ヒジリと無事話を付けられ、ユウイチのハイネセンでの仕事はひとまず終わった。
「ところで君はどの武器を一番器用に使いこなす?」
話題を変え、ヒジリがユウイチに訊ねて来た。
「そうですね、色々使えますけど槍が一番使いこなせます」
「槍か……」
そう言うと、ヒジリは工房の方へ姿を消し、暫くすると槍を掲げて奥から姿を現した。
「矛先が三ツ又の槍、パルチザンだ。仕事を持って来てくれた君に対するせめてもの礼だ」
「ありがたく受け取っておきます。ではまた」
ヒジリに別れの挨拶をし、ユウイチは工房を後にした。
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「へぇ、キルヒアイスさんと一緒に」
「はい。ユウイチさんの方こそ、アユさんのお知り合いだったのですね」
工房を後にしたユウイチは、サユリ等と共にアユの元へ向かった。
(アユ、もうすぐ逢えるんだな……)
道中サユリ等と会話をする中でも、ユウイチの心はアユのことで一杯だった。
「これは、ユウイチ様……」
アユの家を訪れると、キルヒアイスが出迎えてくれた。
「お久し振りです、キルヒアイスさん。アユは元気ですか?」
「ええ、実は……」
深刻そうな顔のキルヒアイスに続き、ユウイチ等はアユの家の中へと入って行った。
「あっ、ユウイチ……」
アユの元へ赴くと、アユのすぐ側に越し掛けているマコトの姿があった。
「よっ、マコト、久し振りだな。あれからずっとアユの相手をしてくれていたのか」
「うん、まあ……」
暗い表情のマコトに違和感を覚えつつ、ユウイチはアユに近付いて行った。
「アユ、約束通り戻って来たぞ……」
「……」
優しくアユに話し掛けるユウイチだったが、アユは静かな顔で眠りに就いたままだった。
「帰って来るのが遅かったから拗ねて寝たフリでもしているのか? ったく、いつものお前なら俺に飛び付いて来る所だっていうのに。らしくないぞ」
「……」
色々と声を掛けつつアユを起こそうとするユウイチだったが、アユは一向に目覚める気配がない。
「キルヒアイスさん、ひょっとしてアユの体調、思わしくないんですか?」
一向に目覚める気配のないアユに不安を感じ、ユウイチはキルヒアイスに訊ねた。
「はい、実は……」
「あうーっ、ごめんなさい! 全部マコトのせいなのよぅ……」
キルヒアイスが口を開こうとする時、突然マコトが泣き崩れた。
「おいマコト、一体どうしたんだ?」
「あうっ、ぐすっ……」
マコトを問いただすユウイチだったが、マコトは泣き続けて応えられる様子ではない。
「私が詳しくお話します。実はアユ様は夢魔の秘薬をお口にしてしまったのです……」
「夢魔の秘薬? 何ですそれ?」
「口にした者は深い眠りに就き、夢を見続けたまま眠り続けると言われる薬です。そして夢を夢魔に食われ、永遠に目覚めないという……」
「なんですって――」
キルヒアイスの言葉に、ユウイチは愕然とした。キルヒアイスの言葉を真に受けるなら、アユはこのまま眠り続けて一生目を覚まさないということになる。
「マコトが、マコトが悪いのよぅ! 黒い服を来たおじさんにアユさんの容態が良くなるってお薬を貰って、そのことをアユさんに話したら元気な姿でユウイチ君に逢いたいからって薬を口にして。そしたら急に眠りに就いて……。全部マコトのせいよぅ〜、あうーっ」
「いえ、アユ様から目を離した私の責任です」
(いや、俺の責任だ……)
それぞれ自分に責任があるというマコトとキルヒアイスだったが、ユウイチも少なからず責任を感じていた。自分がアユの為に一生懸命頑張ろうとしたから。だからアユもそんな自分の為に元気になろうと、よく分からない薬を口にしてしまったんだ。
そうユウイチは、自分を責めるのだった。
「それでジークさん。アユを助ける方法はあるんですか?」
「ええ。今アユ様は夢魔と戦っておられます。その夢魔に打ち勝てばアユ様はお目覚めになられます。ですが、もし負ければ先程申し上げたように永遠の眠りに就かれてしまいます……」
「アユが夢魔に打ち勝てばか……。俺達に何か出来る事はないんですか!?」
「はい。私達も夢魔の秘薬を口にすれば同じ夢を見られる筈です」
「つまり、アユに協力して夢魔を打ち倒せるってことですね! なら迷っている暇はない! 俺もアユと同じ夢を見て、そして夢魔と戦う!」
夢魔の秘薬を口にしてアユが助かるなら迷わず口にする。それで自分が助からなかったとしても、アユが助かればそれでいい。
そう思うユウイチに、心の迷いはなかった。
「私も参ります。こうなったのも私の責任ですし」
「マコトも行く! マコトが薬を貰わなかったらこんなことにならなかったんだから」
「キルヒアイスさんはともかく、お前は足手まといだ!」
「あうーっ、そんな〜〜」
「いえ、恐らく夢の中では精神力が作用するでしょう。マコトさんでも十分力になれますよ」
キルヒアイスに寄れば、夢魔と戦うのに必要なのは精神力。それも多人数で向かった方が撃退出来る可能性が高くなるとのことだった。
「ジーク様、薬は何人分残っているのです?」
「後五人分ありますが、もしやサユリ様も?」
「ええ。アユ様がジーク様にとって大切なお方ならば、サユリにとっても大切なお方ですから」
「サユリが行くなら、私も行く……」
「マイ様まで……」
「二人とも、ありがとう。みんなでアユを救い出そうぜ!」
こうしてユウイチ、キルヒアイス、マコト、サユリ、マイの5人はアユを救い出す為夢魔の秘薬を口にし、アユの夢の中へと入って行った。
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「……ここは……」
薄っすらとした意識の中、ユウイチは意識を取り戻した。目の前に広がっていた情景は、格調高い屋敷の中だった。初めてではないどこか懐かしい情景。その余韻に暫くユウイチは浸った。
「思い出した。ここはマリーンドルフ家……」
今ユウイチの目の前に広がっている情景は、在りし日のマリーンドルフ家だった。七年前、アユと出逢い、時間を忘れるまで遊んだあの懐かしい屋敷……。
「気が付きましたか? ユウイチ殿」
「キルヒアイスさん! ええ、何とか。しかしここは一体?」
「恐らくこの情景はアユ様が一番幸せだった時の情景を夢に浮かべたものだと思われます」
「一番幸せだった時の情景か……」
それは生活が今より快適だった時という意味の他にも、自分と遊んだ時期という意味も込められているのだろうとユウイチは思った。あの時の思い出をアユはずっと記憶の奥底に、大切にしまい込んでいたのだ。
その大切な思い出と共にアユ自身を守らなくてはならない。そうユウイチは強く決心したのだった。
「ホウウウウ!」
そんな時、辺りに奇妙な呻き声が鳴り響き、巨大な怪物が姿を現した。
「こいつが夢魔か!」
「いえ、この魔物は夢魔の配下、バク! ユウイチ殿、気を付けて下さい。バクは夢魔の部下といえ、その手に掛かった者は永遠の眠りに就くと言われています!」
「ホウウウウ!」
ブアッ!
バクの鳴声と共に、強烈な一撃がユウイチ達に襲い掛かった!
「くっ!」
「ユウイチ殿、先程申し上げたように夢の中では精神力が作用されます。現実で戦っている姿を思い浮かべながら戦って下さい!」
「分かりました。パルチザンの威力、ここで試してみる!」
ユウイチはヒジリから貰い受けたばかりのパルチザンを頭に思い浮かべた。すると、思い浮かべたパルチザンが右手に現れた。
「成程、思い浮かべた物が形になるのか。食らえ! 二段突き!!」
ユウイチはバクに向かい、槍技二段突きを放った!
「コォォォウ!」
「なっ!? 効いていない……」
しかしユウイチの一撃は、バクにかすり傷すら負わせていなかった。
ブオッ!
「ぐわっ!」
その隙を突かれ、ユウイチはバクの強烈な一撃をモロに食らってしまった。
「何て強さだ、俺には倒せないっていうのか……」
「ユウイチ殿、臆してはいけません! 心に恐怖や不安を感じる程精神力は弱まります」
「つまり、逆に強い精神力を持てば、奴にダメージを負わせられるって訳ですね」
「ええ」
先程かすり傷すら負わせられなかったのは、自分の心に僅かながら恐怖や不安があったからなのだろうとユウイチは思った。
(強き心を持ち、バクを倒すイメージを掴んで……)
ユウイチは心を落ち着かせ、精神力を高めた。
「ホウウウウ!」
「同じ手を食らうか! 風車!!」
ユウイチは迫り来るバクの攻撃を、槍技風車で押し返した。
フワッ……
ユウイチの一撃を食らったバクは、霞の様に姿を消して行った。
「コォォォウ!」
「くっ、後ろか!」
「我が体に眠りし熱き魔力よ、真空と交わり形となれ! エアスラッシュ!!」
ボシュ!
ユウイチの背後から迫り来るバク! しかしキルヒアイスが唱えた朱鳥術エアスラッシュにより、バクは掻き消された。
「ご無事ですか、ユウイチ殿!」
「ええ。しかし武器だけでなく、術も使えるんですね」
「ホウウウウ!」
「コォォォウ!」
二体目を倒した安堵感に浸っている暇もなく、複数のバクが襲い掛かって来た!
「くっ、こんなに大勢……」
「ユウイチ殿、不安を抱いてはなりません。不安を抱けば精神力が……」
「分かっています。けど……」
周囲を巨大な姿のバクに囲まれては、流石のユウイチも不安を抱かずにはいられなかった。
「風よ、我に立ち向かう者を切り裂く刃となれ! ウインドダート!!」
『我が体に眠りし熱き魔力よ、真空と交わり形となれ! エアスラッシュ!!』
周囲を囲んでいるバクの一角に、蒼龍術ウインドダート、朱鳥術エアスラッシュが放たれた。
「お怪我はありませんか、ジーク様!」
「ジーク、大丈夫……?」
「サユリ様、それにマイ様」
術が唱えられた方から、サユリとマイが姿を現した。
「ええ。ご心配には及びません。しかし、先程のエアスラッシュを唱える声、複数聞こえたのですが?」
「はい。サユリの他にマコトさんが唱えてくれたんです」
サユリ等に続き、マコトが姿を現した。
「どう、ユウイチ? マコトだって役に立つでしょ?」
「今のエアスラッシュはお前が唱えたのか。いつの間に覚えたんだ?」
「アユさんと一緒に練習してたのよ。現実じゃまだ上手く使えないけど、夢の中だと上手く唱えられたわね」
「ホウウウウ!」
「コォォォウ!」
三人の活躍により、数匹のバクを倒すことには成功したが、それでも尚、バクの数は減る気配がなかった。
「くっ、一体こいつ等何匹いるんだ!?」
「ユウイチ殿、恐らくバクは夢魔を倒さない限り消えることはないでしょう」
「親玉を倒さなきゃならないって訳か……」
「ここは私が抑える……。ジーク達は先に……」
「マイ様……分かりました」
「私は魔物を討つ者……。退魔神剣!!」
シャアアア!!
マイは妖刀龍光を掲げ、妖刀龍光固有技退魔神剣を発動した。それにより複数のバクが姿を消した。その隙を突き、ユウイチ達はバクの包囲網から無事脱出出来たのだった。
(アユ、待ってろ。今すぐお前を助けに行くからな……)
そうユウイチは同じ夢の中にいるアユに激励の言葉を掛け、アユの元へ向かって行ったのだった。
|
「はぁはぁはぁ……」
(なかなか粘るな。しかしそろそろ限界だろう……)
一方その頃アユは、一人夢魔と戦っていた。
「うぐっ、負けないよ……きっとユウイチ君が助けに来てくれる。だからそれまでボクは絶対に負けないよ!」
(くだらん、危険を侵してまで夢魔の世界に入って来る人間がいるものか……)
「アユー! アユー! 何処にいるんだーー!!」
その時、虚空の彼方からユウイチの声が聞こえて来た。
「ユウイチ君! ボクはここだよ、ここにいるよ!!」
その声に向かい、アユは必死で呼び掛けた。
「アユ、そこにいるのか! 待ってろ、今すぐ助けに行く!!」
その瞬間、空間が歪んだ。そしてアユの目の前にユウイチ達が姿を現した。
「ユウイチ君っ!」
「アユ、良かった。無事だったんだな……」
「うん、ボクは大丈夫だよ。ユウイチ君、本当に助けに来てくれたんだね……」
「ああ、俺はお前の為ならどんな危険だって顧みない」
(ほう、この夢魔の世界に入って来る人間がいるとはな……)
「お前が夢魔か! お前を倒し、アユを救い出す!!」
ユウイチはパルチザンを構え、果敢に夢魔へ立ち向かって行った。
(しかし、この夢魔をそう簡単に打ち倒せるとは思わぬことだ)
シュルルル!!
「ぐわあっ!」
「わあっ!」
夢魔の烈風剣がユウイチとアユに襲い掛かった。その強烈な一撃は二人を軽く吹き飛ばした。
「うぐ……ぅっ」
「大丈夫か、アユ!?」
「うん何とか……。でも夢魔は強いよ。ユウイチ君となら倒せるかと思ったけど……」
「弱気になるんじゃない! 弱気になったら本当に奴には勝てなくなる。それにお前は一人じゃない! みんながお前を助ける為に夢の中に入って来たんだ!!」
「みんなが……?」
「そうです、アユ様! 諦めてはなりません」
ユウイチの呼び掛けに呼応するかの様に、虚空の彼方からキルヒアイスが姿を現した。
「ジークさん!」
「ユウイチ殿をアユ様の元へ向かわせる為バク共を牽制していて、到着が遅れてしまいました。申し訳ございません」
「ううん、ボクを助けに来てくれたんだね、ジークさん。ありがとう」
「キルヒアイスさん。他のみんなは?」
「はい、それが……」
キルヒアイスの話によると、マイに続き、サユリとマコトもキルヒアイスを先に行かせる為に、バクを牽制しているのだという。
「そうですか、みんなが……」
「ええ。よりアユ様を慕っている者が先に進んだ方がいいと、サユリ様もマコト様も……」
シュルルル!!
三人に容赦なく夢魔の烈風剣が襲い掛かった!
「炎よ! 我等を守りし鉄壁となれ! ファイアウォール!!」
しかし、キルヒアイスが咄嗟に唱えた朱鳥術ファイアウォールにより、直撃は免れた。
「キルヒアイスさん、ありがとうございます。後は俺が!」
ファイヤーウォールの効果が消える隙を狙って、ユウイチが前に出た。
「食らえ! 二段突き!!」
ユウイチは槍技二段突きで夢魔に立ち向かって行った!
(ぐぅ、やるな。しかしその程度ではやられんよ!)
ユウイチの一撃は夢魔にダメージを与えられたものの、致命傷までには至らなかった。
シュルルル!!
「ぐわっ!」
「ユウイチ君!」
「大丈夫だ! 精神力で奴に負ける気はしない。しかし……」
小技では夢魔に致命傷を負わせることは出来ない。何か決定的な一撃が欲しいとユウイチは思った。
(こんな時、こんな時、ジークさんの利き腕が使えたら……)
苦戦するユウイチを見て、そうアユは心に叫んだ。もしもキルヒアイスの利き腕が傷付いていなかったなら、夢魔など敵ではないと。
「!? これは!!」
そうアユが願った瞬間、負傷していたキルヒアイスの利き腕に銀色の小手が現れた。
(ほう、そこにあったか、聖王遺物”銀の手”!!)
キルヒアイスの腕に銀の手が現れた瞬間、キルヒアイスに向かい夢魔が襲い掛かった。
「パリィ!!」
しかし、キルヒアイスは剣技パリィにより、難なく攻撃を回避した。
「ジークさん!」
「どうやらこの小手は、負傷した腕さえ動かせるようになる小手のようですね……」
そう呟くと、キルヒアイスは勝手が利くようになった利き腕に白銀の剣を構え、夢魔へと立ち向かった。
「分身剣!!」
(ヌオオオオオ〜〜!!)
キルヒアイスが繰り出した剣技分身剣は、高速移動しながら何度も敵を斬り付ける技。その強烈な剣技は、夢魔に致命的な一撃を与えた。
「今だ! チャージ!!」
続け様にユウイチがパルチザンを構えながら夢魔に突進し、槍技チャージを食らわせた!
(オオオオオ〜〜! 敗れるというのか!? この夢魔が〜〜!!)
断末魔と共に夢魔は拡散していった。そして、それに呼応するかの様に、夢の世界も崩れ去って行った……。
…To Be Continued |
※後書き
前回の更新から半年以上間を空けてしまい、大変申し訳ございませんでした。
そんな訳でして、約半年振りに「ロマカノ」の続きを書いたのですが、何だか文章力が落ちている気がしますね(苦笑)。やっぱり、こういうのは間を空けないで継続しないとならないのですね。
さて、肝心の話の方は、久々にあゆや真琴が出て来ました。今回のは原作における「ミューズを夢魔の手から救う」のイベントにあたる回なのですが、このネタをやる為にあゆがミューズだったりします。
これからの展開としましては、あゆがパーティに加わったり、往人達がイゼルローンに行ったりと、とにかく人の移動が激しくなると思います。続きはいつになるかは分かりませんが、最低でも月に一話は書けるよう頑張りたいものです。 |
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